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1980年~S1

はじめに

このコンテンツは俺の自伝である。

幼少期からはじまり、
ナンピース日記に通じ、

そして現在の俺を結ぶ物語となる。

連載は不定期だが、隙間時間を見つけつつ執筆していきたいと思う。ちなみにこの自伝を書くにあたり、記憶違いがないように親にもインタビューして確認している。

プライバシーの問題もあるので、名称は変更しているが、、、

これから執筆する全ての物語は実話である。

Sanzi(中山賛二)

■第1話:交通事故死

ガシャーーーン!

大きな音とともに
見知らぬ車が突っ込んできた。

気がつくと、俺の父親は全身に
ガラスの破片が刺さり気絶していた。

妊娠中の母親は、俺を守るように
身を挺して覆いかぶさっていた。

俺の年齢は3歳。

物心というものがつく瞬間が
あるとしたら、

俺の記憶はここから
記録を開始したといえる。

家族で信号待ちをしていた車中。
対向車線から自動車が向かってきた衝突事故。

時代はバブル経済が始まろうとしていた昭和。

エアバッグもドライブレコーダーもない世界。

さいわいにも俺と母親に怪我はなかった。
後日、この交通事故は裁判に持ち越された。

「奥さんなら裁判に勝てるかもしれません!」

弁護士が俺の母親にそう言い放つ。

3歳の俺には意味がわからなかった。
しかし大惨事であることは理解できたし、

なにより母親は3歳の俺にも、
大人と同じように状況を説明してくれた。

そもそも裁判で運転手の証言などとれるはずもない。

父親は大怪我をして意識不明の入院中。
衝突してきた車の運転手は…

即死だった。

母親は幼子である
俺の手を引いて裁判所に向かう。

俺たち家族は車中で
信号待ちをしていただけ。

ただそれだけなのに、
それを証言しなければならない。

「私の、お腹の赤ちゃんも亡くなりました。」

そう。母親は妊娠していた。

死亡したのは相手側だけではない。

俺にできるはずの弟は、
この世に誕生することもなく事故死したのだ。

これは俺の物語。

伝説のナンパ師と呼ばれる、遥か以前の物語。

■第2話:保険金1億円

父親の意識が戻ったので、
母親に連れられ病院に向かう。

すると見知らぬ女が病室に近づいてきた。

「あなたの家族だけ生きているなんてズルいじゃないかぁ!」

どうやら事故死した男性側の奥さんらしい。

母親は、その女と父親を
面会させないように、

病室手前で通せんぼしながら言った。

「私だって流産して子供を失ってるわ。痛み分けでしょ?」

「あなたは裁判に勝って保険金が支払われるでしょ!私は保険をかけてなかったから無一文なのよ!」

「わかったわ。なら保険金は全額あなたに差し上げるから。あなたの夫が即死だったことを、私の旦那には絶対言わないでちょうだい。あの人は、そこまで強くないから。」

相手側は保険をかけておらず自動車で暴走して衝突して即死。

なぜそんな暴挙に出たのか
運転手の心理状態は誰にも分らないが、

とにかく生きてる者達は傷つき、大きな爪痕を残すこになったのは事実だ。

俺たち家族には事故の保険金が下りていた。

その金額なんと…約1億円。

この大金を母親は惜しげもなく
相手に支払うと約束した。

「そんな口約束、信用できないわ!」

相手の女がそう言うと母親は、
かぶせるように啖呵を切る。

「いますぐ手続きしてあげるわよ!そのかわり、うちの家族に手を出したら承知しないからね!わかるわね?この意味?」

引き下がる女。

そして母親は約束通り1憶円を手放した。

「このことは、お父ちゃんには内緒だからね?」

まだ3歳の俺にそう告げる母親。

これは俺の物語。

そして俺と家族の物語。

■第3話:火傷女

父親の病室には、
他の患者も入院していた。

その中でも印象深いのが、
全身火傷を負った女性。

男に振られたショックで、焼身自殺しようとしたら死ねなかったそうだ。

「身体に火をつけたら、家が火事になって大家から弁償しろといわれててさ。今は借金かかえてる状態なのよね~」

あっけらかんとした様子で話す火傷女性。

「そんだけやって死なないのだから、もう生きるのが運命だろ?」

マジメに答える俺の父親。

「そうなのよね~なんであんな男のために自殺なんか考えたのか、今考えるとバカバカしくなっちゃってさ!」

などと笑いながら答える彼女は、
早く治療して、借金を返すために働かないとと意気込む。

どんなにつらくても 笑い がそこにあった。

どんなに過酷でも 笑顔 がそこにあった。

作り笑い?そんなくだらないものじゃない。

どん底から見えてくる
希望もあるのかもしれない。

そう幼心に感じる3歳の俺であった。

これは俺の物語。

パンドラの箱を強制的に開けられた物語。

■第4話:貧乏生活の始まり

さぁ、これから貧乏生活の始まりだ!

1億円を手放した俺たち家族は、

都心から遠く離れた
地方の田舎町にある

ボロボロの安アパートに住むことになる。

父親は大怪我で入院中。
車も免許取消で職も失う。

全財産は、母親が働いていたときに蓄えたわずかな貯金のみ。

生活保護を受けに行ったが、
貯金がわずかでもあると受理されないらしい。

「世の中にはウチらよりももっと大変な人がいるらしいから保護してもらえないってさ」

笑顔でそう説明する母親。

俺たち家族には、子供だから理解できないなんて概念は存在しない。

実際、俺は3歳の当時から
現在まで理解力は同じままだ。

生まれたての赤ん坊は全ての言語を理解する事ができるという。

脳の負担を減らすために、日常でよく使われるものを自動的に選択しているにすぎない。使われない言語能力などは、脳のニューロンが結びつかなくなり固定化され排除されていく。

だとすると、こうして
1つ1つの状況を説明してくれる母親の行動は、

俺の脳機能にとって、大いなる刺激をもたらしてくれたのかもしれない。

この国は3歳の俺を保護してくれなかった。

ならば自力で活きるしかないだろう。

交通事故で生死をさ迷い入院中の父親と、

交通事故による流産で弟と死別した母親と、

共に協力して生き抜くしかないだろう。。。

これは俺の物語。

自分で自分を保護する物語。

■第5話:林檎アパート(5部屋目のホステス)

林檎アパートは、横長に連結した
長屋のようなアパートで、

区切られた5部屋にそれぞれの住人が住んでいた。

左端に住んでいるのが俺ら家族。
右端に住んでいたのがキャバレーのホステスをしていた女。

彼女はいつも俺をみかけると、

牛乳くれたり、バナナくれたり、
いろいろ親切にしてくれた。

林檎アパートの住民は、
どれもかしこも 訳あり な人が転がり込んでいる。

もちろんこのホステス女も訳ありで…

ある日、俺と母親が住んでいたアパートの部屋に、
借金取りのオッサンが怒鳴りこんできたんだ。

「おい!ミシンの代金を払えこのやろう!」

「なんなのあんた!?」

「ミシン代を借金してこの部屋に逃げ込んできてるはずだぞ?」

「今の私にミシン買う金なんてあるわけないでしょうが!どんな人を探してるのよ?」

「夜の仕事しる女で、端っこの部屋に住んでるって情報があったんだ」

そりゃ部屋の端っこの左右を勘違いしてるだろう!

って誰もが突っ込みたくなるのを母親は我慢して答える。

「そんな人知らないわよ!」

借金取りはそのまま帰っていった。

当時のミシンは高級で
数十万円とかしていた時代だったんだ。

だからローンで借金してミシンを購入するというのが一般的。

もちろん俺の家は、生活できるかどうかの
瀬戸際にたたされているわけで、

ミシンなんて高価な品を
購入している余裕はない。

後日、ホステス女が俺の母親と話しているさい、

「奥さん~変な男が尋ねてこなかった?」

と聞いてきたから、借金取りが来たことを母親は説明した。

「お金払わないって集金のオジサンが探してたけど…」

「あぁ、やっぱり?それ私のことだわ」

「一応知らないって言っといたけど?」

「まぁ、そのうち払うつもりではあるんだけどさ」

「うん、払っといたほうがいいよ」

などと会話していた、その夜…

ガシャーン!!

と、ホステス女の部屋の窓ガラスが割れる音が聞こえるんだ。

近所の人が「どうした!どうした!?」と外に出て集まってきたら、

血だらけのホステス女と男が大喧嘩してるわけ。

どうやらホステス女は不倫をしていて、

その男が嫁と別れないわ、

金は貢がせたまま支払わないわで、

死ぬほどの大喧嘩になったらしい。

アパートの住人がケンカの仲裁をして、
救急車呼んで、事なきを得たのだけれど。

そりゃ、こんなハードな出来事が日々毎日のように起こるんだ。

当時3歳だった俺の物心が、
しっかり記憶しているのも不思議ではない。

これは俺の物語。

インパクトの強い日々の物語。

■第6話:林檎アパート(4部屋目の大家族)

林檎アパートは
水道代の支払い方法がかけもちだった。

アパート全体の水道代を合計して各部屋の住人が住んでいる人数で割るという方式。

例えば、俺の家族だと父親、母親、子供で3人分を支払う。

ところが4部屋目に住んでいる、ナナちゃん家は7人家族だから大変だ。

水道代だけでもウチの倍以上となる。

ナナちゃんは俺の1個上の幼稚園児で、

末っ子なんだけれど、
他に5人も兄弟がいるわけ。

長女は、あまりに子供が多くて飯が食えないので、

幼女として
他の家庭に売られてしまった。

次女と長男は、高校に進学せず働いて家計を支えてる。

次男と三男は小学生。

三女はナナちゃんで幼稚園。

では親は何してるのかというと、

実は、母親が血を全部入れ替えないと死んでしまう

特殊な病気で、
治療費に凄くお金がかかるのだ。

当時はエイズという
概念が浸透していなくて、

輸血にエイズの血が混ざっていることで感染するという問題が、のちに発覚するような時代。

さいわいにもナナちゃん家の母親は
エイズには、ならなかったけれど、

やはり治療費もふくめ大家族なので生活が大変なのは事実だ。

それなのに、俺の母親が事故で入院している父親の看病をしに、

毎日俺をつれて通っている間に、

ナナちゃんの母親は、俺のアパートの玄関前に、

食料とかを買って置いてくれてるの。

「引っ越してきたばかりで買い物行くのも大変だろうと思ってね、置いといた」

次女と長男が米屋と食材屋で
働いているので食料が安価に入手できるそうで、

大家族だから家事の大変さもわかってるのだろう。

俺の母親は「ありがとうございます、助かります」ってお礼言っててさ、

俺も、なんとか病気が治れば
いいのになって思ってたんだよね。

林檎アパートは、基本訳ありな人々が住んでいるからさ、

皆で助け合いの精神が
どこかにあったのかもしれない。

これは俺の物語。

助け合いの物語。

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